令和4年にむけて人事労務担当者がおさえておきたい法改正
新型コロナウイルス感染症の影響が今もなお続いており、なかなかコロナ禍前のような状況に戻らない厳しい状況にはありますが、人事労務では来年(令和4年)もさまざまな法律の改正が行われることが決定しています。
今回は令和4年にスタートするさまざまな法改正の中から、3つの法改正を取り上げてご紹介します。まだスタートまで少し時間はありますが、早めの準備に越したことはありません。内容を確認し、必要に応じて対応を進めていきましょう。
パワハラ防止措置の義務化など、おさえておきたい3つの法改正
先行して大企業から義務化されていたパワハラ防止措置ですが、中小企業も来年から義務化されます。
また、女性の職業生活における活躍推進に関し定められた女性活躍推進法の改正により、一般事業主行動計画の策定・情報公表の義務の対象が労働者数101人以上の事業主まで拡大、さらには注目の男性版産休についても来年中にスタートすることとなりました。
なお、各改正のポイントは次の通りとなっています。
パワハラ防止措置の義務化(令和4年4月1日から)
大企業は令和2年から先行して義務化がスタートしていたパワハラ防止措置ですが、中小企業も令和4年4月1日から義務化されます。具体的には、中小企業においても職場でのパワハラを防止するため、次のことが求められます。
- 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
- 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 事実関係の迅速かつ適切な対応
- そのほか併せて講ずべき措置
就業規則などでパワハラの禁止や処分について定める、社内に相談できる窓口を設けて従業員に周知する、もしパワハラの相談があった場合は事実を確認してきちんと対応する、相談者やパワハラの行為者のプライバシーを保護するなどの取組が必要です。
一般事業主行動計画の策定・情報公表義務の対象拡大(令和4年4月1日から)
女性の職業生活における活躍推進に関し定められた女性活躍推進法の改正により、令和4年4月1日からは、一般事業主行動計画の策定・情報公表の義務の対象が労働者数が301人以上の事業主から101人以上の事業主まで拡大されます。そのため、労働者数101以上以上(300人以下)の事業主は、施行日までに、次の対応を進めていく必要があります。
- 一般事業主行動計画の策定・届出
- 女性の活躍に関する情報公表
一般事業主行動計画は、自社の女性の活躍に関する状況を把握、課題を分析し、計画期間などを定めて策定していきます。策定したものは、従業員への周知と外部公表の必要があり、また、策定した旨を労働局へ届出ることが求められます。さらには、自社の女性が活躍する状況について、指定された項目から選択し、求職者などが閲覧できるよう情報を公表することも必要です。
一般事業主行動計画の策定方法などについては、ボリュームの都合上、ここでは詳細を省きますので、厚生労働省のホームページなどでご確認ください。
育児・介護休業法(男性版産休)の改正(令和4年10月1日から)
近年男性の育児休業取得率は上昇していますが、令和元年度でも7.48%となっており、その水準は低いものとなっていました。少子高齢化による人口減少下において、男女ともに仕事と育児を両立できる社会の実現が重要ですが、育児休業取得率は男女で大きな差が存在し課題とされてきました。そのような状況を受け、2021年4月、男性の育児休業取得を促進する育児・介護休業法の改正が可決されました。改正のなかでも特に注目されていた男性版産休については、令和4年10月1日から開始されることが決定しました。男性版産休のポイントは次の通りです。
- 子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能
- 原則として休業の2週間前までに申出必要
- 分割して2回取得が可能
- 労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能
なお、育児・介護休業法の改正では、男性版産休以外にも育児休業を取得しやすい雇用環境の整備や、妊娠・出産の申し出をした労働者に対する個別周知・意向確認、有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件緩和などについても合わせて行われており、これらについては令和4年4月1日から開始されます。スタートのタイミングが異なりますので、その点は注意しておきましょう。
●参考(過去ブログ):男性の育児休業取得促進へ、育児・介護休業法の改正ポイントと施行時期について
まとめ
パワハラ防止措置の義務化や育児・介護休業法の改正に伴い、就業規則や育児介護休業規程で変更が必要になるケースもあります。新型コロナウイルスにより大変な時期ではありますが、スタートまでには就業規則や育児介護休業規程を見直しておくようにしましょう。