男性の育児休業取得促進について

近年男性の育児休業取得率は上昇していますが、令和元年度でも7.48%となっており、その水準はいまだに低いものとなっています。少子高齢化による人口減少下において、男女ともに仕事と育児を両立できる社会の実現が重要ですが、育児休業取得率は男女で大きな差が存在し、課題とされています。

こういった状況を受け、厚生労働省の労働政策審議会 雇用環境・均等分科会では昨年9月から男性の育児休業取得促進策などについて議論が行われていましたが、年が明けた1月18日、労働政策審議会から男性の育児休業取得促進策等についての建議が行われました。

今回のブログでは、この男性の育児休業取得促進策等についての建議についてポイントとなりそうな点をピックアップしてご紹介します。

男性の育児休業の現状

まず男性の育児休業の現状についてですが、令和元年度雇用均等基本調査によると、先に述べた通り令和元年度の育児休業取得率は7.48%となっています。10年前の平成21年は1.72%、さらに遡ると平成8年は0.12%であったため、当時と比較すると取得率は上昇していますが、まだ低い水準といえます。

また、育児休業の取得期間についても男性の場合は約8割が1カ月未満となっており、取得したとしてもその期間は短いものとなっています。

さらに、育児のための休暇・休業の取得を希望していた男性労働者のうち、育児休業制度の利用を希望していたができなかった方の割合は約4割いるとされ、男性労働者の育児休業取得の希望が叶っていない、そんな現状も見受けられます。

男性の育児休業取得促進策について

そうした現状を受け、男性の育児休業取得促進策などについて議論が行われ、1月18日に労働政策審議会から男性の育児休業取得促進策等についての建議が行われました。

厚生労働省から公表された労働政策審議会建議「男性の育児休業取得促進策等について」では具体的な措置の内容ついて細かく記載されていますが、全て掲載するとボリュームが大きくなりますので、その中から現時点で特にチェックしておきたいと思われる点をピックアップすると次の通りです。(具体的な法律案要綱は厚生労働省において今後作成される予定です。)

①子の出生直後の休業の取得を促進する枠組み

  • 対象期間については、出産した女性労働者の産後休業が産後8週であることなどを踏まえ、子の出生後8週とすることが適当である
  • 取得可能日数については、年次有給休暇が年間最長20労働日であることなどを参考に、4週間とすることが適当である。
  • 分割して2回取得できるとすることが適当である。
  • 出生後8週間以内は、女性の産後休業中であり、労働者本人以外にも育児をすることができる人がいる場合もあるため、労働者の意向を踏まえて、事業主の必要に応じ、事前に調整した上で、新制度に限り、就労を認めることが適当である。

②妊娠・出産の申し出をした労働者に対する個別の働きかけ及び環境整備

育児休業を取得しやすい職場環境の整備の措置を事業主に義務付けることが適当である。具体的な内容としては、研修、相談窓口設置、制度や取得事例の情報提供など、複数の選択肢からいずれかを選択することが適当である。

③育児休業取得率の公表の促進等

男性の育児休業の取得を促進するため、大企業(従業員1,001人以上の企業を対象することが適当)の男性の育児休業等取得率又は育児休業等及び育児目的休暇の取得率の公表を義務付けることが適当である。

その他、現行の育児休業についても夫婦交代で育児休業を取得しやすくなるなどの観点から、分割して2回の取得を可能とすることが適当であるとされている点や、「プラチナくるみん」や「くるみん」の認定基準の引き上げやそれに伴う新たな類型「トライくるみん(仮称)」の創設が適当である点なども取りまとめられています。

育児介護休業法はたびたび改正されていますが、もし改正されることが決定すれば社内への周知や就業規則の改訂など、実務的に非常に大きな改正になるように思われます。企業の担当者は、現在厚生労働省が公表している労働政策審議会建議「男性の育児休業取得促進策等について」を一度確認しておき、今後の動向もチェックしておきたいところです。