令和3年度地方労働行政運営方針のポイントについて

厚生労働省は4月1日、「令和3年度地方労働行政運営方針」を策定し、公表しました。

毎年度公表されるこの方針は、その年度の労働行政の重点課題などを示したものとなっています。さらに、各都道府県の労働局では、この厚生労働省が策定する方針を踏まえて、各労働局の事情に即した重点課題・対応方針などを盛り込んだ方針が策定されることになっています。

つまり、企業側の立場からみれば、この方針を確認することによって、労働基準監督署などが今年度の課題として何を設定しているのかを把握することができるともいえます。今回のブログでは、そんな令和3年度地方労働行政運営方針の概要とその中から気になる点をいくつかピックアップしてご紹介したいと思います。

令和3年度地方労働行政運営方針の概要は?

まず、今年度の方針の概要はどうなっているのでしょうか?今年度の方針の概要は以下の通りです。新型コロナの影響を踏まえ、今年度は新型コロナに着目した方針が多く含まれているように見受けられます。

●令和3年度地方労働行政運営方針の概要

1)ウィズ・ポストコロナ時代の雇用機会の確保
①雇用の維持・継続に向けた支援
②業種・地域・職種を越えた再就職等の促進
③非正規雇用労働者の再就職支援
④女性活躍・男性の育児休業取得等の推進

2)ウィズコロナ時代に対応した労働環境の整備、生産性向上の推進
①「新たな日常」の下で柔軟な働き方がしやすい環境整備
②ウィズコロナ時代に安全で健康に働くことができる職場づくり
③雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

男性の育児休業取得推進など、おさえておきたい点

次に各項目の中で気になる点を少し掘り下げてご紹介してみたいと思います。

●女性活躍・男性の育児休業取得等の推進

本項目では、男性の育児休業取得促進等をはじめとする仕事と育児の両立ができる職場環境整備として、「パパ・ママ育休プラス」、「育児目的休暇」等の男性の育児休業に関する現在の制度について周知を行うとしています。また、育児・介護休業法の改正法案が成立した場合は、男性の育児休業取得を促進するための新しい育児休業の枠組み等の改正内容の周知に取り組むとしており、育児・介護休業法の改正については、その動向を注目しておく必要があるでしょう。

●ウィズコロナ時代に安全で健康に働くことができる職場づくり

・職場における感染防止対策等の推進…職場における感染防止対策等の推進として、労働局での相談対応、「取組の5つのポイント」や「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」等を活用した職場における感染防止対策について、取組を推進するとしています。労働基準監督署でも受け取れる感染拡大防止のチェックリストは事業所内で活用しやすいリストになっていますので、再度、事業所内の対応をチェックするためにも活用されてみても良いのではないでしょうか。

・労働時間…労働時間については、長時間労働の抑制及び過重労働による健康障害を防止するため、各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場、過労死等に係る労災請求が行われた事業場に対する監督指導を引き続き実施するとしています。

・年次有給休暇…年次有給休暇については、年次有給休暇の時季指定義務の周知徹底に取り組むとされています。2019年4月にスタートした時季指定義務。2年が経過し、多くの企業で浸透しているかとは思われますが、1年以内に5日間の有給休暇が確実に付与できているかを再度点検しておきましょう。

なお、上記で取り上げたものはほんの一部であり、厚生労働省から公開されている内容は多岐に渡ります。個別の企業、事情によりおさえておきたい点は異なるかと思いますので、時間がある場合は公開されている内容を全体的にチェックされてみてはいかがでしょうか。

まとめ

最後に、今回ご紹介した令和3年度地方労働行政運営方針について簡単にまとめると次の通りです。

  • 地方労働行政運営方針とは、その年度の労働行政の重点課題等を示したものである。
  • 女性活躍・男性の育児休業取得等の推進として、男性の育児休業に関する現在の制度について周知。育児・介護休業法の改正法案が成立した場合は、新しい育児休業の枠組み等の改正内容の周知に取り組むとしている。
  • 時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場等に対し、監督指導を引き続き実施するとしている。
  • 年次有給休暇の時季指定義務の周知徹底を実施するとしている。

なお、今回ご紹介した方針は全体の方針です。事業所のある都道府県労働局の方針を確認したい場合は、管轄の労働局ホームページをチェックしてみてください。(ただし、公開されていない場合もあります。)