男性の育児休業取得者の割合は前年から大幅に増加

厚生労働省は先日、令和2年度雇用均等基本調査(*)の結果を公表しました。

*雇用均等基本調査… 男女の均等な取扱いや仕事と家庭の両立などに関する雇用管理の実態把握を目的に実施されている調査です。

先日、男性の育児休業取得を促進する育児・介護休業法の改正が可決されたこともあり、男性の育児休業取得率が気になるところですが、令和2年度の男性の育児休業取得者の割合は12.65%となり、令和元年度の7.48%から大幅に増加しました。

男性の育児休業取得率は12.65%

平成30年10月1日から令和元年9月30日までの1年間に配偶者が出産した男性のうち、令和2年10月1日までに育児休業を開始した人の割合は12.65%で、冒頭でも触れた通り、令和元年度の調査(7.48%)から大幅に増加する結果となりました。

育児休業者の割合を業種別にみてみると、金融業・保険業で高くなっており(31.04%)、他の業種を大きく引き離す結果となっています。なお、一般的なイメージとして、大企業で男性の育児休業の割合が高いのでは?との印象もあるかと思いますが、育児休業者の割合を事業所規模別でみてみると、500人以上で13.09%となっているのに対し、5~29人でも9.68%となっており、事業所規模による差はそれ程大きくないことが統計上からは見て取れます。

取得率は増加。ただし課題も…

取得率が大きく増加した男性の育児休業ですが、うち約3割が5日未満の取得となっており、長期間での取得が進んでいない現状が見受けられます。今後は取得率の向上と合わせ、その期間の長期化が課題といえるのかもしれません。

また、内閣府の調査では、雇用されて働く男性の約3人に1人が同僚の男性が育児休業を取得することに抵抗感があると回答しており、こういった点をいかに解消していくかも取得率向上の鍵を握りそうです。

育児・介護休業法の改正ポイントと施行時期

年々取得率が高まっている男性の育児休業ですが、その水準はいまだに低いものであることは事実です。このような状況を受け、昨年から男性の育児休業取得促進策などについて議論が進められていましたが、2021年4月、男性の育児休業取得を促進する育児・介護休業法の改正が可決されました。改正のポイントは下記の通りとなっていますので、確認しておきましょう。

なお、育児・介護休業法の改正に伴い、就業規則や育児介護休業規程の変更が必要になります。改正の詳細は追って省令等で定められるとされていますので、その詳細を待つ必要がありますが、就業規則や育児介護休業規程の変更が必要であることは忘れないように注意が必要です。

①子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設 (施行日:公布後1年6か月以内の政令で定める日)

子の出生後8週間以内に4週間まで取得することができる柔軟な育児休業の枠組みが創設されました。休業の申し出は、原則休業の2週間前までに行うこととされ、分割して2回まで取得可能となります。なお、労使協定を締結することにより、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能です。

②雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け(施行日:令和4年4月1日)

育児休業を取得しやすい雇用環境を整備(研修、相談窓口設置等、複数の選択肢からいずれかを選択することとなる予定)しつつ、妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置が必要となります。なお、個別周知の方法については、面談での制度説明、書面による制度の情報提供等の複数の選択肢からいずれかを選択することになる予定です。また、当然ですが、休業取得の意向の確認については、労働者に対し育児休業の取得を控えさせるような形での実施は認められないことも定められる予定です。

③育児休業の分割取得(施行日:公布後1年6か月以内の政令で定める日)

原則分割することができない育児休業ですが、分割して2回まで取得可能となります。なお、この分割については、①の新制度とは別に行うことが可能です。

④有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件が緩和施行日:令和4年4月1日

有期雇用労働者の育児休業取得については、「引き続き雇用された期間が1年以上」・「1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない」ことの両方が求められますが、このうち「引き続き雇用された期間が1年以上」の要件が撤廃されます。ただし、労使協定を締結した場合には、無期雇用労働者と同様に、事業主に引き続き雇用された期間が1年未満である労働者を対象から除外することが可能です。

⑤育児休業の取得の状況の公表の義務付け施行日:令和5年4月1日

従業員数1,000人超の企業は、育児休業等の取得の状況を公表することが義務付けられます。なお、公表する内容についてですが、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」と省令で定める予定とされています。