過重労働解消キャンペーンの結果と監督指導事例

厚生労働省は先月、令和2年11月に実施した「過重労働解消キャンペーン」における重点監督の実施結果について公表しました。

2019年4月からは働き方改革関連法が施行され時間外労働の上限規制の導入等がスタート、労務管理はますます重要なものとなってきています。今回のブログでは「過重労働解消キャンペーン」の調査結果から、実際にどのような内容で違反を指摘されたのか等、公開された事例を交えてご紹介したいと思います。

違法は時間外労働は約3割

令和2年11月の過重労働解消キャンペーンでは、9,120事業場に対して監督指導が行われましたが、そのうちの約3割にあたる2,807事業場において違法な時間外労働が認められれたと公表されています。約3割はまだまだ高い割合であることは間違いありません。しかし、前年の違法な時間外労働が認められたのは約4割であったとされていますので、前年と比較すると大きく減少しています。大きく減少した原因ははっきりとは分かりませんが、新型コロナの影響があるものと思われます。

また、その他賃金不払残業(いわゆるサービス残業)については478事業場(5.2%)において違反が、健康障害防止措置(健康診断未実施、衛生委員会不設置等)については1,829事業場(20.1%)において違反があったとしています。特に衛生委員会については弊所でも相談が多いところですので、不備が無いように注意しておきたいところです。

調査は大きい会社だけ?

公表資料には企業規模別の監督指導実施事業場数も掲載されています。「うちは大企業じゃないから…」とお話をお聞きすることはありますが、令和2年の企業規模別の監督指導実施事業場数をみると、「1~9人:13.8%」、「10~29人:23.8%」、「30~49人:9.8%」と50人未満が約5割(47.4%)となっています。企業規模が小さいから監督指導は無いということはデータ上ありませんので、企業規模にかかわらず、常日頃から適切な労務管理に努めましょう。

監督指導の事例紹介

最後に今回公表された資料に掲載されていた監督指導の事例をいくつかご紹介します。(公開された事例から一部抜粋してご紹介しています。全ての事例をご覧になりたい場合は、厚生労働省のホームページをご覧ください。)

  • 労働者2人について、1か月80時間を超える時間外・休日労働が認められ、36協定で定めた上限時間(特別条項︓⽉60時間)を超える違法な時間外・休⽇労働(最⻑︓⽉168時間)が認められた。
  • 労働者について、特別条項に定められた特別延⻑時間まで労働時間を延⻑できる⼿続き(労働者代表に対する事前申し入れ)が適正に⾏われていない状態で、36協定で定めた上限時間を超える違法な時間外・休日労働が認められた。
  • 1年以内に5⽇間以上の年次有給休暇を取得させていなかった。

36協定についてですが、2019年4月に改正労働基準法が施行され、法律上、時間外労働の上限は原則月45時間、年360時間となりました。臨時的な特別な事情がある場合には特別条項によりこれを超えることもできますが、1か月の時間外労働と休日労働の合計は100時間未満に限られます。1年の時間外労働については、年720時間以内(ここは休日労働は含みません。)とされています。まずはこの点をきちんと整理して把握しましょう。また、仮に36協定で適切な時間数を定めていても、日々の時間管理が杜撰ではこれを遵守できません。適切な時間管理を行うことも非常に重要です。

年次有給休暇ついて監督指導を受けた事例が掲載されていた点も注目しておきましょう。2019年4月から会社は10日以上の有給休暇が付与される労働者(有期雇用労働者や管理監督者も含みます。)に対し、毎年5日間、時季を指定して有給休暇を取得させることが義務付けられています。なお、この制度は中小企業に猶予期間はなく、大企業と同時期(2019年4月)にスタートしていますので注意しましょう。また、有給休暇の時季指定を行う場合、就業規則に「時季指定の対象となる労働者の範囲」、「時季指定の方法」に関する記載が必要となります。自社の就業規則に記載があるかも確認しておきましょう。

まとめ

最後に、今回ご紹介した「過重労働解消キャンペーンの結果と監督指導事例」の中で、特に注目していただきたい点をまとめると次の通りです。

  • 9,120事業場に対して監督指導が実施。そのうち約3割にあたる2,807事業場において違法な時間外労働あり。
  • 企業規模別の監督指導実施事業場数によると50人未満が約5割。
  • 36協定できちんと時間数を定めていても、日々の時間管理が杜撰では問題。適切な時間管理を。
  • 年次有給休暇の時季指定について監督指導あり。中小企業も大企業と同時期(2019年4月)にスタートしているため注意。就業規則も要チェック。

新型コロナウイルスの影響で大変な時期ではありますが、2019年4月にスタートした働き方改革関連法への対応で漏れが無いかなど、企業としては確認しておきたいところです。